アルバカーキからサンタフェに戻り、ホテルでPCにつなぐLANケーブルを忘れたことを思い出し、
先日日本人女性と共に食事をしたモールに出向いた。
そこにはOffice Depotがあり、ここならLANケーブルも手にはいるだろう。
買物するものがなくても、スーパー、ドラッグストア、Best Buyのような電気屋から、
こういったOffice Depotをうろつくのが大好きな私。
Office DepotをうろつきながらLANケーブルを探していると、
一人の20代そこそこのアルバイトの男の子が声をかけてきた。
ネイティブでも白人でもなく、英語にも少し訛りがある彼。
父親がフランス人、母親はマサイ族出身で、現在留学中だという。
彼はすぐにLANケーブルの売り場を案内してくれ、
テンポラリーで使用するならこの手で十分じゃないか、もし自宅でも使うならこっちのほうがいい
などと商品の細かい部分まで説明してくれながら、
もしホテルに戻って使用できないようなら
ここに電話してくれれば、ちゃんとしたものを用意するから
と自分の携帯番号を教えてきた。
携帯を教えてくるなんて・・・と少し警戒する私。
大丈夫、もし合わなければ明日お店に来て交換してもらうから・・・
と適当にかわす。
すると彼は
「明日の予定は?」
「明日はタオスまで行くつもり」
「タオスまでは結構距離もあるし、お天気も不安定だから運転は気を付けた方がいいね」
「ありがとう」
「良ければ明日バイトが休みだから、僕が案内しようか?」ますます警戒してしまう私。
彼にも私の警戒が感じ取られたようで、彼はマネージャーを連れてきて自分の信頼、身分等を説明させ、
明日私をタオスに連れて行こうと思うから保証人になってくれというようなことを話している。
マネージャー曰く、彼は身元がかなりしっかりしていて、
仕事に対しても責任感があり優秀なバイト店員で、お客からの評判も良いという。
念のためにとマネージャーは自分の名刺も私にくれ、これを携帯しておけば万が一なにかあっても、
僕のところに連絡が来るから・・・ それくらい彼を信用しても大丈夫だという。
じゃあ、僕の携帯番号はさっき教えた。
明日の朝9時に店の前の駐車場で待ってるから、もし来る気になったら駐車場に来てくれ。
僕からはあなたの連絡先は聞かない。信用してくれるかどうかはあなた次第だ。
といって彼とは別れた。
ホテルに戻ってからも彼の厚意を素直に受け取っていいのか、疑うべきなのか相当悩んだ。
知らない土地で、しかも遠くまで車で2人きり。年齢的には一回り以上下の男性だから、
特にやましい考えは持っていないと思いつつも、警戒心ばかりが強くなる。
翌朝まで悩んだが答えが見つからない。
もう一度彼に会って話をして決めようと、予定の時間に待ち合わせ場所に向かった。
彼はすでにそこに来ており、
「実はタオスに行くのは初めてで、昨夜友人からいろいろ聞いたり資料もいろいろ集めたんだ」
と言って、ガイドブックやら大量のネットサイトをプリントアウトしたものをもって来ている。
ここまでしてくれているのに、この場で
「やっぱり信用できないからごめんなさい」
とは言えなくなった。結局彼とタオスに向かうことにした。
彼の名前はアディル。
フランス語、英語、アラブ語、マサイ語、イタリア語、ドイツ語を操る、国際経営学を学ぶ大学生。
これだけの言語を話せると、どこに行ってもさほど困ることはないため、
彼は言葉が通じないということの不安や心細さを知らないということで、
父親が中学生の彼を単身で1か月北欧へ旅させたという。
言葉が通じないところで不安に駆られたものの、様々な人に親切にされ感激したという。
そのときに、このお返しを何かの形で伝えたいと相手に言うと、その人に
僕らにお返しをするのでなく、同じ境遇にあった人に、
自分がしてもらったことを同じようにしてあげなさい。
それが一番の僕らへのお返しになるし、
君がしてあげたことはまた次の人に受け継がれるからね。
まさに Pay It Forward の精神だ。
彼はまさに、今そのタイミングだ!と言った。
ここで一気に彼への警戒感が解けたような気がした。
また彼は 野茂英雄 の大ファンだという。
漢字には意味があるらしいが 英雄 の意味はなにか?と聞くので Hero だと答えると
ますます気に入ったといって、自分のことを Hideo という名前にするという(笑)
あれから7年以上たった今でも、時々忘れたころに
「Hey, it's me Hideo! 」 と連絡がある。
現在は大学を卒業し、ワシントンDCで政府関連の何らかの仕事をしているらしい。
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